正しく敬語を使う事はビジネスマナーの一環。上手く使いこなすには実践あるのみですが、まずは敬語がどのようなものか理解しておくことが大切です。社外の方や上司と良好な関係を築くためにも、しっかり敬語をマスターしましょう。
敬語は3種類!尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いを確認
「敬語」と一括りにしがちですが、敬語には3つの種類があります。
それは「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つです。こうして3種類が並ぶと、小難しい印象があるかもしれません。
でも、誰もが子供の頃から何気なく使い親しんできたものなので、難しく考える必要はありませんよ!
それぞれの敬語がどういった意図で使われているのかさえ押さえておけば「変な敬語を使って恥ずかしい思いをする」ということも避けられるはずです。
●相手を立て敬意を表す「尊敬語」
尊敬語はその名のとおり尊敬すべき相手に対して使う言葉。相手への敬意を表すことができる言葉です。
使う対象は、立てるべき相手、目上の人。ビジネスシーンでは、社内で上司や先輩に対して使ったり、取引先の人、お客様に対して使ったりします。
相手の動作や状態に対して使う言葉なので「お客様が見る」という言葉を尊敬語に直すと「お客様がご覧になる」になります。
使い方としては「ご+動詞+になる」「お+動詞+になる」という形が基本ですが、尊敬語ならではの表現もあるので気を付けましょう。
(例)「言う→おっしゃる」「見る→ご覧になる」「食べる→召し上がる」など
また、動作・状態以外に、相手が所属する会社・店・学校などにも尊敬語があります。
(例)「相手の会社=貴社」、「相手の店=貴店」、「相手の学校=貴校」
相手の会社については「貴社」と表現するのがマナーです。
(例)「貴社の新商品についてお聞かせください」
【尊敬語のポイント】
・目上の人や立てるべき相手に使う
・相手の動作や状態を表現する時に使う
・「ご+動詞+になる」「お+動詞+になる」という使い方をする
(例)「お客様がご利用になる」「お客様がお帰りになる」
・尊敬語ならではの言葉に注意する
・相手の所属する会社などにも尊敬語も使う
●へりくだり相手を立てる「謙譲語」
謙譲語も相手を立てるものですが、自分を下げる(へりくだる)ことで相手を立てるというのがポイント。
「へりくだる」という感覚が難しいかもしれませんが、時代劇で家来がお殿様に使う言葉を思い浮かべると、イメージしやすいと思います。
家来がお殿様に対して「申し上げます」「存じ上げております」などと、よく使っていますよね。これが謙譲語です。
尊敬語は立てる相手の動作や状態に対して使いますが、謙譲語は立てる相手に対する自分(会社)の動作や状態に対して使います。
(例)尊敬語=「お客様がお話しになる」、謙譲語=「(私が)お客様のお話しを伺う」
また、お客様の前では上司の行動も謙譲語で伝えるようにします。
(例)「専務の加藤がご案内いたします」
基本は「ご+●●する」「ご+●●いたす」「お+●●する」「お+●●いたす」という形になりますが、謙譲語ならではの表現もあるので、よく使うものは覚えておきましょう。
(例)「言う→申し上げる」「行く→参る・伺う」「思う→存じる」など
動作・状態以外に、自分が所属する会社・店・学校などにも謙譲語があります。
(例)「自分の会社=弊社」、「自分の店=弊店」、「自分の学校=弊校」
自分が所属する会社については「弊社」と表現します。
【謙譲語のポイント】
・目上の人や立てるべき相手に使う
・自分の動作や状態を表現する時に使う
・「ご+●●する」「ご+●●いたす」「お+●●する」「お+●●いたす」という使い方をする
(例)「(私が)ご確認いたします」「(私が)お書きします」
・謙譲語ならではの言葉に注意する
・自分が所属する会社などにも謙譲語を使う
●聞き手に対して丁寧な言葉で話す「丁寧語」
丁寧語は語尾に「です」「ます」「ございます」などをつけて丁寧に話す言葉のこと。ビジネスシーンでは基本的に丁寧語が使われています。
(例)「今日はいいお天気です」
「ご本人」「ご令嬢」「ご注文」「お茶」「お酒」など、名詞に「ご」「お」をつけることは「美化語」と呼ばれています。
【丁寧語のポイント】
・語尾に「です」「ます」「ございます」などをつけて丁寧な表現にする
・名詞に「ご」や「お」をつけた美化語を用いる
覚えておきたい敬語フレーズ一覧
敬語は相手との会話・コミュニケーションを円滑に進めるために欠かせないものです。ビジネスシーンでよく使う&覚えておきたい敬語のフレーズをまとめました。
会話の中で違和感なく使えるようにしておくと便利ですよ。
【挨拶】
・お世話になっております
・ご無沙汰しております
・お待たせいたしました
・行って参ります
・ただ今戻りました
・お先に失礼いたします
【質問】
・どのようなご用件でしょうか
・お伺いしたいことがあるのですが
・大変失礼ですが…
・恐れ入りますが…
・いかがでしょうか
【承知・承諾】
・承知いたしました
・かしこまりました
・承(うけたまわ)りました
【受け取る】
・頂戴いたします
・拝受いたします
【渡す・納める】
・ご査収ください(書類・データ等の納品時に使う)
・お納めください
・ご笑納ください(お土産・ちょっとしたギフトなどを渡す時に使う)
・召し上がってください(食べ物を渡す時に使う)
【依頼】
・お手数ですが…していただけますか
・申し訳ありませんが…をお願いできますでしょうか
・お忙しいところ恐れ入りますが…
【断り】
・あいにくですが…
・残念ですが…
・いたしかねます(できませんの意味)
・分かりかねます、存じません(分かりませんの意味)
・お控えください(やめてくださいの意味)
・大変恐縮ですが…(自分の都合で断る場合)
【謝罪】
・申し訳ございません
・ご迷惑をお掛けいたしました
・伏してお詫び申し上げます
【感謝】
・恐れ入ります
・恐縮です(ほめ言葉などに対して使う)
・おかげさまで…
・御礼申し上げます
要注意!敬語なようで実は失礼な言葉
正しいと思って使っていても、実は失礼にあたる言葉もあります。相手を不快にさせないよう、正しい敬語をマスターしておきましょう。間違った敬語の使い方と、正しい言い換え方をまとめました。
【挨拶】
・(×)しばらくぶりです→(○)ご無沙汰しております
「しばらくぶりです」は、同僚もしくは部下などには使えますが、立場が上の人に対しては使わない言葉。「ご無沙汰しております」に言い換えて使いましょう。
・(×)ご苦労さまです→(○)お疲れさまです
「ご苦労さまです」は立場が下の人に対して使うと認識されている言葉です。使いたい場面では「お疲れさまです」が無難。
・(×)お世話さまです→(○)お世話になっております
「お世話さまです」はフランクな挨拶なので、立場が上の人に対して使うのは失礼。しっかり「お世話になっております」と挨拶を。
【日常的に使う言葉】
・(×)了解しました→(○)承知しました
「了解しました」は単なる丁寧語。立場が上の人に対してはふさわしくありません。使いたいシーンでは「承知しました(いたしました)」に。
・(×)なるほど、なるほどですね→(○)おっしゃるとおりです
「なるほど」は立場が下の人に対して使う言葉です。「おっしゃるとおりです」に言い換えて使いましょう。
・(×)参考になります→(○)勉強になります
「参考になります」の“参考にする”は上から目線の表現なので、立場が上の人に対して使うのは失礼。相手への尊敬を込めて「勉強になります」と言うのがベターです。
・(×)大丈夫です→(○)何かを断る場合:結構です/問題が無い場合:問題ございません、差し支えありません
何か申し出を受けて辞退する場合は「大丈夫です」ではなく「結構です」というのが正解。“問題がない(OK)”という意味の場合「結構です」と言うと上から目線になってしまうので、立場が上の人には使いません。「問題ございません」や「差支えありません」を使いましょう。
ただし、社内でフランクな敬語を使って問題ない相手なら「大丈夫です」も可能です。
・(×)すみません→(○)謝罪:申し訳ございません/恐縮:恐れ入ります
頻繁に使われる「すみません」はくだけた表現です。謝る場合は「申し訳ございません」がベスト。恐縮の意味で使う場合は「恐れ入ります」と言います。
・(×)教えてください→(○)知識や方法:ご教示(きょうじ)ください/学問や技芸:ご教授(きょうじゅ)ください
くだけた敬語で許される相手なら問題ありませんが、社長や取引先の方には使うのは失礼です。知識や方法を教えてほしい場合は「ご教示ください」、学問や技芸を教えてほしい場合は「ご教授ください」です。使い分けもしっかりマスターしておきましょう。
・(×)とんでもございません→(○)とんでもないことです/とんでもないです
「とんでもない」は丸ごと使うものなので「ない」という部分だけを「ございません」に変えるのはNG。正しくは「とんでもないことです」や「とんでもないです」と言います。
・(×)分かりません→(○)存じ上げません
「分かりません」は普通の丁寧語なので、立場が上の人に伝える場合は謙譲語の「存じ上げません」を使います。
・(×)お名前を頂戴できますでしょうか→(○)お名前を伺ってよろしいでしょうか/お名前をお聞かせいただけますでしょうか
名前は受け取りするものではないので「頂戴」を使うのは間違っています。「伺う」や「お聞かせいただく」といった表現を使いましょう。
・(×)ご一緒します→(○)お供いたします
「一緒」という言葉が相手と対等な立場という印象を与えてしまうので、立場が上の人に対して使うと失礼に思われることも。「お供いたします」を使うと失礼がありません。